学会設立の趣意
「教育の基礎を芸術に置くことによって、われわれは同時に平和的な世界の礎石を据えているものであることを確信する。」
教育・政治・文化領域全般に渡って活躍したイギリスの詩人、ハーバート・リードが『Education through
Art(芸術による教育)』(1943年)の中で語った言葉である。リードの思想は、人類の幸福と平和的な世界を願い、民主主義社会を視野に入れた広い意味での人間教育を唱えたものである。人間教育としての美術・芸術教育の価値の高さを説くリードの言葉に象徴されるように、美術・芸術を通しての教育は、まさに国際社会や人類の発展にとって重要なものとなろう。
本学会は、教員養成大学における論理的な整理と実践的な検証を行い、わが国の美術教育に果たす役割の大きさを自覚して様々な問題に対処できる組織にする一方で、美術教育研究を推進するために「日本教育大学協会全国美術部門」の研究発表の機会を独立させる趣旨のもとに発足した。
本学会の設立においては、美術・芸術分野の分析と美術・芸術教育における学問の構築をめざすことに重点が置かれる。同時に、社会の動向や教育思潮を踏まえながら美術教育の実践的な側面の研究を担い、日本社会並びに教育の場において重要な教科として位置づけることが本学会の使命である。
本学会の目的は、美術・芸術の教育に携わる者すべてが交流・連携し、理論研究と実践研究の質を高め、日本社会の中で美術・芸術教育の発展に努めることにある。子どもの人間形成に寄与できる教育のあり方を示し、学校教育における教科として確たる位置を築くためには、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、美術館等それらが積極的にかかわりあい、互いの学問研究が有機的に結びつけられなければならない。
本学会の活動においては、教員養成大学及び学校現場における美術教育の課題と展望を示し、教材開発、指導法の開発、カリキュラム開発、教育評価などの様々な指針を示しながら、美術・芸術教育が果たす役割と新たな可能性を追求していく。そして、アジアや諸外国における美術・芸術教育研究との交流を一層図ることで、国際的な文化交流の視点からも日本の美術・芸術教育の発展に努めていく。