大学美術教育学会のこれまでとこれから
大学美術教育学会理事長 新関 伸也 (滋賀大学)
この度、大学美術教育学会理事長に就任しました滋賀大学の新関伸也です。よろしくお願いします。思えば、本学会の運営に関わって10年以上の年月が経過しました。その間印象に残っていることは、日本学術会議の学術協力団体加盟(2010年4月)、学会ホームページ開設(芳賀正之先生が尽力)、学会誌リニューアルと学会事務の民間委託などがあげられます。特に、個人的には学会誌編集委員長として、学会会誌名を「美術教育研究」(46号2014年3月発行)」と新たに命名するとともに、紙面の全面リニューアル、J-stage掲載、査読システムから発行までを民間業者(中西印刷)に委託したことです。当時、大会開催や会計、学会誌編集、会員管理など大学教員や個人頼みの実務が限界に来ている時期でした。多くの課題がありましたが、理事長はじめ総務理事の方々の尽力で課題を乗り越え、運営改革したことが思い出されます。しかし、このような学会運営の改革や方法の変更は、くり返しますが、一個人の力でできる訳ではありません。現状の課題を把握し、そりを何とか克服したいというベクトルが共有された成果でした。
さて、今日、あらゆる組織や団体で従来のシステムや枠組みの維持が困難になってきました。その要因は単純に言えば少子高齢化による人口減少です。システムを維持する人的保証がなければ、予算があっても機能しません。大学においても40年前に比べて18歳人口、つまり学生数が4割も減った今日、教員養成においても様々な既得権を見直すことが迫られています。特に影響が大きかったことは大学院教育学研究科の消滅です。教職大学院に移行したことにより、教科専門と教科教育の教員の定員確保は困難となりました。それに連動して、大学・学部の美術教員の専任採用数も減ってきたわけです。かつては、各大学に丸投げした大会開催も専任教員の激減により、美術教育講座の人員だけだの開催は不可能となりつつあります。さらに、コロナ禍において学会大会の開催方法も対面がかなわず、オンライン形式による研究発表やシンポジウム開催が主流となり、飲食を伴う懇親会もなく、貴重な情報交換の場も失われました。
このような激変期の中、美術教育関係学会の振興と連携強化を意図した「造形芸術教育連携協議会」(発足2009年9月)において、将来の学会統合を見据えた本格的な議論が活性化してきました。本学会においても、課題を浮上させつつ、どのようなかたちで将来に向かうかを真剣に議論しなければなりません。そのためにも「大学美術教育学会」と「全国美術部門」と表裏一体で運営してきた在り方を見直し、必要あれば分離する方向を探らなければならないと思っています。