令和5年度 副理事長挨拶

ご挨拶-22年目にして思うこと

大学美術教育学会副理事長 松島さくら子(宇都宮大学)

 思えば令和2年(2020)、当学会及び部門の宇都宮大会の開催年でした。コロナ禍に見舞われた未曾有の年でもありました。年度当初、対面での開催に向け準備をしておりましたが、ご存じのとおり私たちの生活、大学の授業も一変しました。しかし理事・総務局の先生方の粘り強いご支援のもと、宇都宮大学の教員とともに、初のオンラインでの大会開催となりました。
 その後、令和4年度より大学美術教育学会副理事長を仰せつかりました。それまで私自身が学会へ関わる機会は決して多くはなく、私のような者が学会副理事長とは、誠に僭越でありますが、宇都宮大会での感謝の念いもあり、微力ながらお役に立てればと考えております。他の役員の先生方のお力をお借りしながら、何とか2年の任期の職責を果たしたいと思います。
 私ごとですが、宇都宮大学教育学部(現 共同教育学部)に着任してから本年で22年目となります。大学に着任した当初より、徐々に教員数が削減され美術教育が置かれている現状と存続の危機を感じつつ、あれよという間に年月が経ってしまいました。
 私の専門は工芸で、漆芸を主としております。授業では工芸の実技と理論と工芸科指導法を担当しています。高等学校での工芸の授業が少なくなり久しく、工芸教育の存続の危惧をも切実に感じております。私たちが一生涯を通し衣・食・住を確保することは必須であり、さらにより豊かな人生をおくるためには、やはり歴史と風土に根ざした手仕事と工芸、そして美術を通した教育は大事な人間形成につながります。しかし、コロナ禍オンラインでの授業や活動、バーチャルな体験やAIによる知識の習得も広がり、その恩恵を受けつつも、未だ人と人が距離をとり、実体験の少なさと身体感覚の鈍化が進んでいるのではと感じざるを得ません。
 改めて、本学会会則に目を通しますと、「本学会の目的は、美術・芸術の教育に携わる者すべてが交流・連携し、理論研究と実践研究の質を高め、日本社会の中で美術・芸術教育の発展に努めることにある」とあります。学会は、美術教育に携わる各会員の専門分野の研究成果を発表する場であり、同時に変化の大きい今日の教員養成大学及び学校現場における美術教育の課題を共有し、美術・芸術教育が果たす役割と新たな可能性を追求し続けていくことに他なりません。
 今年度の香川大会は、現地参集による対面の開催となります。香川大学の皆様や総務局の皆様、発表に向け準備されている学会員の皆様のご尽力に感謝申し上げますとともに、対面ならではの対話と交流が広がる大会となりますよう祈っております。