大学美術教育学会理事長 八重樫 良二(北海道教育大学)
令和2年度の理事長を務めさせて頂きます北海道教育大学の八重樫です。今年起きた新型コロナウイルス禍は社会経済活動に大きな打撃を与え、その影響は多方面に及んでいます。当学会におきましても9月開催予定の宇都宮大会について、参集しての通常開催をやむなく変更して、ICTを活用して実施することとしました。このことにつきまして学会HPをご覧頂きますようお願いします。
改めまして。私の専門分野はデザインです。本学会は私のように実技分野に係る教科専門に属する研究者と美術科教育に関する専門に属する研究者、あえて大別するなら実技系と理論系といった違いあるメンバーから構成されることに特徴があることと思っています。
ですが法人化以降、美術教育に携わる大学教員の数は削減が進む傾向にあります。いきおい美術史・美術理論といった理論系の分野も含む教科専門について、選択的な人事配置にならざるを得ないのが実情です。本学会においても教科専門に属する会員が減少し、論文査読に際しても分野によっては手不足が生じています。
大学教員の減少は同時に若年層の割合が減ることともなり、高齢化社会を示す人口比が逆ピラミッド型になることと同様、今のままでは学会運営について何かとうまく対応できなくなることが予想されます。前理事長、新潟大学の佐藤先生がこの話題をめぐって昨年度の本会報No.37に「美術教育学会の未来」と題する一文を書かれています。文中、本学会と日本美術教育学会と美術科教育学会の連携組織である「造形芸術教育協議会」での論議について報告され、この三学会の統合問題について言及されています。
どの学会でも運営に多くの労力が割かれることは言うまでもありません。本学会では昭和38年の学会発足以来、長らく理事長が在籍する大学スタッフがその務めを果たしておられました。平成24年度からそれに代わるものとして事務作業のアウトソーシング化に取り組み、さらなる合理化を進めて苦心の末に平成26年には現在の運営スタイルとなった経緯があります。それでもなお学会運営に伴う労力は大きく、世代交代を頼りとした方策だけでは継承が困難となることを思わずにはいられません。
持続可能な学会運営を目指す上で本学会を含む三学会の統合は、運営の合理化と多重の学会加入を軽減する方策に成り得ることから、次代の学会像としてその具体化への検討が始められようとしています。本学会の特色を損なうことなく新たな学会像へと向かうには、学会員の皆様の合意形成がなによりも大切です。会員の皆様からのご意見、お考えをお寄せ下さると幸いです。どうぞよろしくお願いします。