『学会費値上げのご報告と退任のご挨拶』
平成24年度大学美術教育理事長 大嶋 彰(滋賀大学)
二年間の理事長任期が終わろうとしていますが、本学会にとりましては非常に重要な変革期での二年間となりました。私に与えられた最大のミッションは、これまで佐藤事務部長お一人に頼りきっていた事務業務や、総務局長をはじめとして執行部の尋常ならざる仕事量に対して、学会専門の会社にアウトソーシングすることによって、会費、名簿管理はもとより、学会誌査読・編集、大会運営、ホームページ管理等学会運営業務の大幅な負担軽減を実現することでした。そのためには、これまでの会費では賄えないため、昨年10月13日の総会で3,000円の値上げをご承認いただきました。平成26年度から8,000円の会費となりますのでよろしくお願いいたします。会員の皆様にはご負担をおかけしますが、これによってアウトソーシングがほぼ実現することになります。学会運営の実情をご理解いただき、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
さて、平成26年度からは、新理事長および新執行部のもとで本学会の社会的使命がより発展的に前進することと確信しておりますが、現実の美術教育の状況は極めて厳しいものがあります。中学校や高等学校の美術科担当専任教諭の適正配置は地域により大きな偏りがみられ、また複数校を兼務している事例も多く、教大協研究部門を通じて要望書を提出していますが、実現の道は険しいものがあります。さらに、教員養成系大学のみならず美術系大学の志願者も減り続けている状況に留まらず、学生の質的変化にも憂慮するものがあります。美術教科が教育の重要な基盤として揺るぎない承認を得ることは、美術教育に携わる者にとって最重要の課題なのですが、美術それ自体の虚焦点的なあり方や、個々人固有の多様な研究に拡散しがちな領域の性格から根本的な理論に集約しづらいことなど、隔靴掻痒の感をまぬがれないのが実情なのかもしれません。
しかし、本学会の役割はそのためにこそあると言えるのではないでしょうか。教大協全国美術部門との協働関係もこの課題抜きには考えられませんし、美術という教科を教育にしっかりと位置付けるためには幅広い経験と英知を集める場が何より必要なのだと思います。また我が国の美術教育では、全米美術教育学会(NAEA)のような一本化した組織がないことから、国の教育施策に対しての発言力に脆弱さがつきまとっています。現在三学会連携なども進めていますが、よりトータルな組織化なども喫緊の課題と思います。ともあれ、本学会の運営がスムーズに行われることになれば、このような様々な課題にも応えることができると思います。
最後になりましたが、本学会の益々の発展を祈念して退任のご挨拶とさせていただきます。
(大学美術教育学会 「会報No.30」 平成26年3月発行)