■大分大会を振り返って
大会実行委員長
冨田 礼志(大分大学)
第51回大学美術教育学会は平成24年10月20日(土)と21日(日)の両日、大分市の大分大学教育福祉科学部にて開催されました。関西・関東から離れた遠隔地故に参加者の減少が心配されましたが、総参加者数は206名であり、口頭発表は57件、ポスターセッションは13件、ポスター展示は4件が実施されました。司会役を引き受けて頂いた九州地区の各大学会員は約30名でした。予想外の参加者数で、余ると思って用意した概要集の数が足りず、本学学生に配布していたものを回収して辛うじて間に合わせることが出来ました。
懇親会は大分市内では豪華な会場でしたが、106名の参加があり、用意した尺八の余興に大嶋会長先生が即興で参加してくださり、図らずも予期せぬ盛り上がりがあり、スタッフ一同ほっとしました。
大会の準備段階では、様々な不安がありました。一つは、参加者数の予想が大変難しいですが、特に大分大会での誤算は、交通費や宿泊などの経費がかかる大会には、学生や院生の参加数が期待できないだろうと思っていました。しかし、蓋を開けると学生だけで50から60人の参加があり、若い人たちの研究熱心さを頼もしく思いました。
口頭発表の領域は、「教員養成」「造形の考察」「地域と教材」「教材開発」「鑑賞教育」「工作・工芸」「美術史」「美術科教育」「海外と日本」などであり、テーマごとに発表が行われました。最近は指導要領の改訂に伴って鑑賞教育が注目されており、鑑賞の教材開発と授業実践の研究発表が二日間にわたり行われました。
美術教育の将来に関して時間数の削減は勿論、選択教科になる心配は払拭できないものでありますが、それ故に危機意識も強く教科の本質を明らかにしようとする発表が行われました。口頭発表と平行して行われた全国学生会議においては教科の危機を意識し、教科の存在意義について討議が深められたと思います。
美術科の今後は教員養成と学校教育現場の連携・協働が進められるべきで、大学は地域の現場の要請に真摯に取り組むことが緊急の課題となっています。地域からの発信はアートの問題だけではなく、当に教育の改善に繋がることでしょう。
(記録:総務局)
■第50回大分大会シンポジウム概要
テーマ:地域から発信するアート
日 時:2012年10月20日(土)16:00~17:30
会 場:大分大学教育福祉科学部100号教室
パネリスト:
山出淳也(BEPPU PROJECT代表理事、「混浴温泉世界2012」総合プロデューサー)
加藤康彦(大分県企画振興部県立美術館推進局主幹)
山木朝彦(鳴門教育大学教授)
司会進行:田中修二(大分大学准教授)
明治期以降、中央集権化を推し進めてきた日本において、いわゆる「地方」における文化の振興はつねに困難な問題でありつづけ、人口減少、少子化が大きな問題となっている今日ではさらに危機的な状況にあるといえる。
本シンポジウムは、地域に根ざした美術および美術教育の活動を実践されているパネリストのお話を出発点に、美術活動と美術館、美術教育が深く結びつくことで生み出される多様な表現や視点が、地域の文化をいかに発展させ得るかを考える機会となることを目指した。
山出氏からは本大会と同時期に大分県別府市内で開催されていた別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界2012」をはじめとする、BEPPU
PROJECTの活動が紹介された。加藤氏には2015年春開館予定の大分県立美術館の概要とその目指す役割についてお話しいただいた。山木氏は、包括的な文化のまとまりとしての「地域」という視点から、地域を意識化させ、アートの意味内容を措定する機能をもつものとしての美術館の役割を、海外や徳島県の事例をもとに論じられた。
現代アートが地域にもたらす力(山出氏)、「情報としてのアート」だけではない「出会いとしてのアート」の必要性(加藤氏)、美術館等のネットワークが従来の地域やアートの概念を揺り動かす広域の地域概念を形成する(山木氏)といった重要な論点が提起され、パネリスト間や会場との活発な質疑応答が行なわれた。
■研究発表・ポスター発表・ポスター展示報告
○口頭研究発表
口頭発表は、「造形の考察」「特別課題」「産学・官学連携」「教員養成」「地域と教材」「鑑賞教育」「子どもの造形」「工作・工芸」「全国学生会議」「表現する場」「美術史」「美術科教育」「教材開発」「海外と日本」「幼児教育」「学校での活動」「自然と素材」という17のカテゴリーに分けて、5つの教室を会場として行なわれた。
第1日目は22件、第2日目は32件、合計54件の発表があった(ただし「全国学生会議」は1件とする)。発表時間は、3件分の時間を連続して実施した「全国学生会議」を除き、発表20分、質疑応答7分とした。
○ポスター発表・ポスター展示
ポスター発表9件、ポスター展示4件は、10月21日(日)に教育福祉科学部100号教室で行なわれた。このうちポスター発表は、同日13:00~13:25に発表者によるプレゼンテーションと質疑応答が実施された。いくつかの発表では当初の予定時間を過ぎても熱心な質疑応答がつづき、研究者の交流が深められていた。なおポスターは終日展示されたが、使用教室を大学美術教育学会総会の会場として用いるため、14時以降は教室外の中庭に展示を移動した。
全体として、口頭研究発表を17のカテゴリーに分けたことからもわかるとおり、多彩な研究が集まる場となった。そのなかで、鑑賞教育や、地域性に焦点を当てた発表、自然の素材に関心を向けた発表が多く見られたことは、今日的な動向を示唆するものといえるであろう。
それぞれの発表内容の詳細については、『研究発表概要集 大分大会』(2012年)を参照されたい。
*なお、本大会の「エクスカーション」として、10月21日(日)17:30~19:30に、「混浴温泉世界2012」見学ツアーを山出淳也氏の案内により実施した。
■第51回大学美術教育学会全国大会開会式・総会報告
■開会式
日時:平成 24 年 10 月 20 日(土)11:00 〜 11:25 会場:大分大学教育福祉科学部棟 100 号教室
司会進行:田中修二(大分大学)、記録:総務局
1.開会の辞 副理事長 岩村伸一(京都教育大学)
2.祝辞 大分大学教育福祉科学部学部長 柳井智彦様
3.大会案内 冨田礼志(大分大学)
■合同懇親会
日時:平成 24 年 10 月 20 日(土)19:00~21:00 会場:レンブラントホテル大分
■大学美術教育学会総会
日時:平成 24 年 10 月 21 日(日)15:10~15:40
会場:大分大学教育福祉科学部棟 100 号教室
司会進行:田中修二(大分大学)、記録:総務局
1.挨 拶 理事長 大嶋 彰(滋賀大学)
2.議長団選出:( 議長:東北地区 立原慶一(宮城教育大学)、副議長 近畿地区 村田利裕(京都教育大学)
3.総 会
【報告事項】
(1)会員登録・会員申込 総務局長 相田隆司
(2)学会誌委員会報告 委員長 岩村伸一
(3)国際交流委員会報告 委員長 安東恭一郎
(4)その他
ホームページ等 総務局 学会総務部長 芳賀正之
【協議事項】
(1)平成 24 年度役員 (理事)・ 各種委員構成・任期
理事長 大嶋 彰
(2)平成 23 年度事業・決算報告 総務局長
(3)平成 23 年度監査報告
監事 大宮康男・増田金吾
(4)平成 24 年度事業計画(案)・予算(案)
総務局長・事務部長
(5)学会会則及び各種規定・細則の改正について
理事長
(6)平成 25 年度大会開催大学 理事長
(7)その他
4.議長団解任
5.次期開催大学挨拶 村田利裕(京都教育大学)
6.開催大学挨拶 冨田礼志(大分大学)
7.閉会の辞 副理事長 新関伸也
※大会運営事務引継ぎ学会総会終了後(H24 大会運営理事・委員 +H25 大会運営理事・委員)
■大学美術教育学会総会
議事録(概要)
・報告事項
(1)会員登録・会員申込については、総務局より学会会員数(個人会員388名、大学会員313名の合計701名)が報告された。
(2)学会誌委員会報告については、委員長より平成24年度の事業計画、論文投稿数等が報告され、あわせて学会誌第46号からフォーマット等を変更する予定で検討を継続中である旨が報告された。
(3)国際交流委員会報告については委員長より国際交流委員会費の活用方法について報告があった。
(4)その他については学会総務部長よりホームページのリニューアルについて報告があった。
・審議事項
(1)平成 24 年度役員、委員構成、任期については理事長より提案があり原案通り承認された。
(2)平成 23 年度事業・決算報告については、事業計画が総務局長、決算報告が事務部長より提案され、監事による
(3)平成 23 年度監査報告ののち承認された。
(4)平成 24 年度事業計画(案)・予算(案)については総務局長、事務部長より提案、
(5)学会会則及び各種規定・細則の改正については理事長より提案があり、いずれも承認された。
(6)平成 25 年度大会開催大学については理事長より提案があり承認された。